地震に強いお墓作りとは?
2025.01.06 コラム画像は3年前に起こった東日本大震災の余震後に現地調査に行ったときの様子です。場所は震源に近い福島県相馬地域。
想像を絶する被害でした。この時にお墓参りをしていたら・・・考えたくもありません。
日本は地震大国と呼ばれて久しいですね。昨年は年始早々、能登半島で大きな地震もありました。また、太平洋側でも南海トラフを震源とする地震が予想されています。仮に大きな地震がおきてしまうと生活が一変し、被災しながらもどこから手を付けてよいものやら・・・と途方にくれてしまうことは十分に予想できますが、その一つとしてお墓も上げられるのではないでしょうか?
では、そんなお墓の心配事を軽減する技術を施工法とともにご紹介いたします。
【トップベース工法による基礎工事】
《重要》先に申しておきますが、この工法が絶対ではありません。あくまで減災のための手段です。
現代の地上構造物において基礎工事は欠かせないもの。お墓とて同じです。よって、あとから手を加えることはできません。またお墓が建つ地盤がどういうものかを把握していることも重要となります。
画像はトップベース工法を行う際に地中に埋設する独楽(コマ)です。なぜコマがコマのような形をしているか?ですが、地震は地中を伝って地上に伝播します。いわゆる地震波。この波を地中で受け止め、コマ自体を「先に」積極的に「揺らす」ことでコマ上部への地震波の伝播を減衰させること、この作用を期待して生まれたのがトップベース工法です。よってこの形状は平常時は地中にかかる力を下部の円錐状の面で受け止めることで安定度を増し、地震波が到達した際はその形状から揺れやすいですが、揺れても軸があるおかげで元の位置に戻りやすいことがお分かりいただけると思います。
では実際の施工法について見ていきましょう。
今回の現場はすでにトップベース工法にて基礎工事を行った経験がありますので、その経験から掘削する深さを検討します。今回は通路から740㎜掘り下げます。では掘っていきましょう。
掘り終わりました(笑)
これが通路から740㎜の深さ。隣地の墓地の基礎工事の倍以上の深さです。スコップの長さからも想像してみてくださいね。掘り床は非常に安定しており且つ湧水もなく、お墓を建てるには最適な地盤です。この状態で一度ランマーにて転圧しましたが、床が平均に締まりましたので合格です。こののち茨城県産の自然石(天然)砕石で地盤改良層を作ります。
層の厚みは250㎜。この厚みになるまで3回ほどにわけて締固めていきます。
なぜなら1回の転圧で砕石が締め固められる厚みはせいぜい3~5㎝ほどですから、一度に20㎝砕石を入れても上層しか締め固められていない可能性があるから。ここは時間がかかってもじっくり攻めます。そのあとにコマをセットしていきます。
直径330㎜、高さ330㎜のコマ状です。これを今回28個使用します。セットが終わった様子がこちら。
コマの周囲は地盤改良層に使った天然砕石です。ちなみになぜ天然砕石を使うかといえば、RCなどコンクリート塊を崩して作られた再生砕石は粉が非常に多いです。よって締めると水たまりができるほどカッチカチになりますが、言い換えれば水を通さないということ。
お墓のように小さな面積でここの場所だけ雨水が浸透しないとなると長い目で見た場合、なにかよからぬ作用を起こしかねません。
しかし天然砕石の場合は締めあげても水は浸透し、周辺水位の低下とともに水は引いていきます。これは周りの地盤環境と差が出にくいということ。これが天然砕石を使う最大のメリットと考えます。
さて、ここからがトップベース工法の肝となる砕石の締固めです。
コマの円錐下部に「これでもか!」というくらい砕石を充填します。
ちなみに使っている機械の重みは20㎏ほどあります。これを使い円錐下部の隙間にまんべんなく砕石を充填します。以前参考までに、試しにコマを引き抜いてみたことがありました。その様子がこちら。みっちゃんミチミチに詰まってますね。
またコマの形状のごとく、きれいに円錐状に砕石が留まっています。これなら合格。
このくらいでようやく隣地墓所の基礎コンクリート下部まで達しますが、締め上げた砕石がコマの上面と揃うくらいが締めあげ終了の合図。その後、追い打ちをかけるように再びランマーで転圧します。ちなみにランマーの重さは84㎏。一人では持ち上げられません(笑)
ランマーをかけ終わった状態でコマの沈下と不陸の確認をしますが、ほぼ認められなかったので合格としました。砕石の充填がうまくいった結果です。ちなみに基準は誤差10㎜以内と結構厳しいのです。
さてここからは通常の基礎工事。
型枠を組んだあと弊社では当たり前ですが、住宅基礎と同様に防湿シートを敷き込みます。
この薄い膜1枚がいい仕事をします。そのいい仕事とは・・・
基礎コンクリートから石材への水分の移行が少ない=色味の変化が僅少に抑えられる ということ。画像のお墓は一昨年6月に完成し、昨年9月に撮影したものです。その間1年ちょっとですが、見かけにほぼ変化がありません。なにもしないとモルタルを介しコンクリートに近い部材下部は吸水による「濡れシミ現象」を起こし、色合いが黒っぽく変化します。
とはいえ、別にそれが悪いわけではありません。当たり前で自然の姿。ですが「見かけ」として変化を嫌うなら、シート1枚の手間はいくらでもありませんからやってるだけのことです。ですが、これも絶対はないです。濡れシミが起こる理由は未だに不明で明らかな原因までたどり着いておりませんので、あしからず。
シートを敷きこんだら鉄筋を敷設します。
太さは13㎜、ピッチは200㎜。地盤そのものが安定していますから必要にして十分な鉄筋量と考えます。そして高さ出しを行い生コンの敷設です。
そして現在は型枠をはずして、年またぎで養生中。
年もあけたのでそろそろ施工石材の準備に取り掛からなくてはなりません。
というわけでトップベース工法による基礎工事の一連の流れを解説してみましたがいかがでしたでしょうか?
ここまでの工事は筆者一人で行っています。大変じゃないですか?って思うじゃないですか?。
はい、とっても大変です!(笑)
とはいえ、現場に合わせた段取りと自分の体力と知識をフル活用して「楽しみながら」やってます。仕事は楽しくないと!
お墓の地震対策は他にもありますが、筆者的にはこの工法が現在のところ最善と考えオススメしている次第です。とはいえ前述の通り 絶対 はありえません。
また、茂原周辺は地下水の水位が高い場所が多く、掘削時に湧水するケースがあります。結果、軟弱地盤という判定になりかねませんが、その対処法としてこれまでは杭打ち工法を取るのが一般的でした。しかしその場合、地盤の補強がされているわけではなく、杭が上物を支えているだけですので、地震波の減衰には至っていないと考えます。
その地震波の減衰作用を起こさせるにはトップベース工法が最適解と考えますが、工程途中に行う砕石地盤改良だけでも減災につながるはずです。なぜなら能登の地震の際も強固な地盤の地域は比較的被害が少なかったことが理由です。では、この茂原地域で実施するにはどういった作業工程を踏めば良いか?
このへんがノウハウなんです。一人で作業しているとはいえ、伊達にあちこちで80㎝近く穴掘ってませんよ(笑)
それではまた。