河野石材店

磨いた石は汚れが気になる(笑)

2024.09.19 施工実績

墓石は磨いてあって当たり前!そう思っていませんか?
それは近代において機械化によって石材の加工技術が上がったからですね。それまでは成型するところからすべて手作業。それはそれは大変な作業です。大割したものを小割にして石ノミである程度成型し、ビシャンという面を均す道具を数種用い、その後荒砥石でビシャンの痕跡を消しつつこれまた数種の砥石で艶を出していく・・・。明治時代はこれが当たり前。その前は艶を出す砥石そのものがなかったのでビシャン仕上げが当たり前。そのもっと前。平安時代以降明治までのころは石ノミのみで成型しておしまい。なぜなら磨く道具がなかったから・・・と、こんな感じかと思います。
で、本題。磨いた石は汚れが気になる(笑)なわけですが、言い換えれば磨いてしまった故に汚れが気になるということです。

施工事例でもご紹介したこのお墓。外柵類は磨いてありますが五輪塔はビシャン叩きのザラザラ仕上げ。1年たつとどうなるでしょう?

磨いた外柵類は建墓当時のままですね。施主様はお参りの際、行くたびに濡れ雑巾で汚れをふき取ってくれているそうです。ありがたや。しかし五輪塔はといえば・・・。これを「汚れ」と見てしまったあなたは固定概念にとらわれすぎかもしれません。なぜなら前述の通り、今だから「あえて」磨かなかったという選択肢があることに気づかないといけません。ではこの汚れをどう言い換えれば良いか?最もふさわしい言葉は「枯れてきている」もしくは「枯れはじめている」と言い切ります。それはこの五輪塔を「擬人化」したいから。人も年齢を重ねるにつれ髪は白くなり肌はシワやシミが増えていきますね。それを汚いと言いますか?言っちゃったらお友達なくしますよw。しかしこれは「石」です。石とて時間とともに人と同様に汚れていく・・・ではなく「枯れていく」と思えるならあなたの人生においての気づきですね。よって、引き渡しの時に「絶対掃除をしないでください!」とお伝え済です。その際身内の方がこう仰いました。「ケルヒャー禁止!!!」ご理解いただけたようです(笑)そしてまだ学生さんであるお孫さんたちにこう言いました。「君たちが大人になってご両親を見送るとき、自身が送られる身になったな~と思った時、この五輪塔がどういう枯れ方をしているかをみてほしい。ケルヒャーしちゃうと一瞬でキレイになるかもしれないけど、そこまで枯れるまでに要した時間はかえってこないよ」と。石屋的に言い換えれば「ここまでなるのに何年かかったと思ってるの!」って怒っちゃうやつw。これって日本人独特の「価値」ですね。いわゆる「わびさび」の世界。これは自然からなる「石」だからこそ。人が手をかけすぎない(磨かない)とこういうストーリーが将来的に成立するわけです。で、行き着く先はこういう感じ。

西大寺奥院(おくのいん)五輪塔(奈良県奈良市西大寺野上町1丁目)
こちらは実際に見てきました。修学旅行のコースには絶対に入りませんwが、なんとも美しいではありませんか!ちなみに建立は鎌倉時代後期、ざっくり700年前です。この五輪塔にケルヒャーできますか?(笑)ですから枯れていくほど「価値」があがっていくのです。そう感じられれば死ぬまでの残り時間を有意義に過ごせるのではないかと思うんですね。お墓への考え方って自身の「在り方」そのものかもしれません。

*弊社施工の五輪塔は茨城県笠間産「稲田石」を日本の職人さんに製作していただいたものです。
*図らずとも五輪塔に興味をもってしまったあなたにはこちらのサイトをオススメいたします。
 https://kawai24.sakura.ne.jp/index-1.htm